人間臨終考2026~チェ・ゲバラ(中編) なぜ日本人の多くは…

初登院からのチェ・ゲバラ人気は変わることがなかった。なぜ自分はこんなに引っぱりだこにされるのか? ジレンマと起死回生の一作を抱えたチェが抱いた日本への大きな疑問とは。人間臨終考2026です。
森達也 2026.03.11
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チェ・ゲバラ(1928〜1967) 享年39

Che Guevara

チェ・ゲバラ(森達也作)

チェ・ゲバラ(森達也作)

ボリビアのジャングルでチェ・ゲバラが処刑された1967年以降、ボリビアの政治はそれまで以上に激しく揺れ動いた。その最大要因は、反共を名目に秘密工作を仕掛け続けたアメリカの存在だ。ゲバラ掃討作戦そのものも、CIAと米軍特殊部隊の支援のもとで遂行されている。冷戦下においてラテンアメリカは「アメリカの裏庭」と呼ばれて国家安全保障戦略の最前線となり、グアテマラ、ブラジル、チリ、アルゼンチン、ニカラグア、エルサルバドルなどほとんどの国のクーデターや内戦をアメリカは裏で工作した。

チェが殺害されて2年後の1969年、アメリカと親密な関係を築きながら独裁政治を敷いていたボリビアのレネ・バリエントス大統領がヘリコプター墜落事故で死亡し、ゲバラ討伐時に政府軍を指揮したアルフレド・オバンド将軍がクーデターを起こして政権を掌握するが、オバンドは米石油資本に対する強硬姿勢を見せたためにアメリカとの関係は悪化し、軍内左派のホセ・トーレス将軍が政権を掌握してオバンドを追放するが、彼の労働者参加型政策と急進的な社会主義的傾向はアメリカにとって「第二のキューバ」の萌芽と映り、1971年に右派のウゴ・バンセル大佐がアメリカの支援でクーデターを起こす。

さらに1980年には、麻薬取引との関係が取り沙汰されたルイス・ガルシア・メサ将軍が権力中枢に居座る。彼の政権は国際的孤立を深めて2年後に失脚するが、この時期もまた、アメリカは「麻薬との戦い」と「反共」という二重の論理を使い分けながら、ボリビアに軍事援助や経済制裁などで影響力を及ぼし続けた。

クーデターと政変が繰り返された18年間、ボリビアの国土は荒廃し、人々の生活は疲弊した。2006年、社会主義運動(MAS)のエボ・モラレスがボリビア初の先住民族出身大統領として誕生するが、天然ガスの国有化や資源主権の強化などの試みは、米欧エネルギー資本にとって看過できない政策だった。モラレスはその地位を奪われ、同じMASのルイス・アルセがその路線を引き継いだが、2025年10月の大統領選でロドリゴ・パス・ペレイラ(中道・キリスト教民主党)が勝利し、約20年続いた左派政権は幕を閉じた。

2026年1月、ドナルド・トランプ大統領は強硬な反米姿勢をとるベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を、国際法を無視して軍事力で拘束した。世界は驚愕したが、ラテンアメリカに対してこの程度の干渉と工作は、アメリカはずっと行ってきた。ただし表向きは秘密裏に。トランプは隠さない。ありえないほどに露骨だ。アメリカファーストを身上に理念や博愛や平等を嘲笑する。何かが壊れていると思うほどに剥きだしだ(ただしそれを喜ぶ人たちがいることも確かだ)。

「ゲバラが来たぞ」

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